個人事業主の減価償却の方法については、何も届出をしない場合は、
法定償却方法である定額法で減価償却が行われます。
ただし、一定の固定資産については、一定の届出を行うことにより定額法以外の方法により減価償却を行うことが可能です。
定額法から変更をするメリット
定額法以外によく採用される償却方法として、定率法があります。
定額法の場合は、その名のとおり、耐用年数に渡って毎期定額の減価償却費を計上しますが、
定率法の場合は、未償却残高に償却率を乗じて償却費を計算しますので、
初めの段階でよりたくさんの減価償却費を計上することが可能になります。
【例】機械装置10,000,000円を減価償却する。(耐用年数は10年)
<定額法>→個人の場合、届出をしなければ、この方法になる。
10,000,000円 × 0.1 = 1,000,000円
<定率法>
10,000,000円 × 0.2 = 2,000,000円
やはり、定率法の方がたくさんの減価償却費を計上することができますね。
たくさんの減価償却費を経費に算入することで、
その分節税効果を高めることができるメリットがあります。
なので、面倒な届出を出してでも、償却方法を変更されるメリットがある方々は、
利益がたくさん出ていて減価償却費を増やして節税効果を得たい方、ということになります。
では、次にどのような届出を行っていくのかを見ていきましょう。
減価償却資産の償却方法の届出書
正確な名称は、『所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書』といいます。
棚卸資産の評価方法を変更したい場合と同じ用紙になります。
(ちなみに、棚卸資産は何も届出をしないと、最終仕入原価法にて評価をします。)
【手続き対象者】
事業所得者、不動産所得者、山林所得者又は雑所得者のうち、新たに業務を開始した方、
既に取得している減価償却資産と異なる種類の減価償却資産を取得した方
又は従来の償却方法と異なる償却方法を選定する事業所を新たに設けた方
【提出時期】
手続き対象者となった日の属する年分の確定申告期限までに提出
とのことです。
なので、
例えば、平成29年に新規開業をされた個人事業主の場合、
平成30年3月15日までに届出を行えば、平成29年分の確定申告から変更後の償却方法で減価償却することが可能ですね。
確定申告書の提出と同時に届け出てもよさそうなかんじです。
減価償却資産の償却方法の変更承認申請手続
こちらは、償却方法を、現在行っている方法から変更しようとする場合の手続きとなります。
所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の変更承認申請書
【手続き対象者】
減価償却資産の償却方法を変更しようとする方
【提出時期】
変更しようとする年の3月15日までに提出
先に紹介しました『減価償却資産の償却方法の届出書』は、新規開業の方などが対象で、
対象者が限定されていましたが、
この変更承認申請手続きは、「変更したい」方なら誰でも大丈夫です。
ただし、申請書が現在の償却方法を採用してから、3年を経過して提出されているか、
変更しようとする償却方法によっても適正な所得計算が行われるかについて、
税務署側で審査されるかたちとなります。
やはり「申請書」と名前がついているだけあって、審査されるのですね。
この場合、
償却方法を変更しようとする年の12月31日までに処分の通知がなかったときは、
承認されたものとみなされます。
つまり、この申請書を出して、年末までに税務署から何の音沙汰もなければ、「OKだよ」ということですね。
ダメな時だけ税務署から連絡があるみたいです。
償却方法が変更できない資産もあるので注意です
平成10年4月1日以後に取得した建物の償却方法は、旧定額法又は定額法に限ることとされています。
また、
平成28年4月1日以後に取得した付属設備及び構築物の償却方法は定額法に限ることとされています。
これらについては、届出や申請書を提出しても、変更はできませんので注意してください。
☆★☆ 編集後記 ☆★☆
昨年にご開業をされた私の個人のお客様で、
とある固定資産に多額の投資(期間が定まっている)をされましたが、
投資期間が投資資産の耐用年数よりも数年短いことと、
定率法を選定することで、利益の圧縮が見込め、
大きな節税効果を期待できますので、
今回、選定届出のご提案をしようと考えております。
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