個人事業が軌道にのってきたときの法人成りの検討

個人事業が軌道に乗ってくるタイミングで法人成りを検討される事業者は多いです。

そのタイミングは人それぞれですが、売上高が1千万円を超えてこられるあたりで「そろそろ法人成りしようかな」と検討をスタートされる方が多いです。

なぜ「1千万円が多い」のかといいますと、まず消費税においてこれまで免税事業者でいられたのが、2年後より課税事業者になること、所得税や住民税の税負担を重く感じる方々が増えてくることです。

ただ、それらの理由以外にも法人成りにあたっては様々なことを検討する必要があります。

まず、金銭の大きな負担としては、社長、従業員含めて社会保険に加入しなくてはならないということですが、この社会保険料の負担を高額にかんじる社長は多いです。

個人事業主のときは国民年金に加入していますが、法人成りすると厚生年金に加入しなくてはなりません。 国民年金は月々一律1万6千円ほどの負担ですが、厚生年金に加入すると一律ではなく、給与の額に応じて負担額が増加します。

この社会保険料の負担の増加により節税部分の効果が薄れてしまうだけでなく、ケースによっては、出て行くお金が多くなる場合だってあります。 ただ、今のうちに厚生年金に加入して掛金を多く払っていれば将来貰える公的年金の額が増えますので、考え方によってはメリットとなります。

どのように捉えるかは人それぞれだと思いますが、充分な検討が必要な部分です。

この他にも法人成りのメリット、デメリットについては色々ありますが、主要なものを下記にまとめました。

法人成りのメリット

節税効果がある

所得税や住民税において 上述しましたように所得税と住民税において節税効果が期待できます。

所得税の場合は超過累進税率で所得が多いほど税率が高くなります。1番高い税率になると約55%ほど(地方税を併せて)。一方、法人税も法人所得の額に応じて段階的に税率が変わりますが、1番高い税率でも33%ほど(地方税を併せて)です。

また、法人から支給される給与に対する所得税や住民税は給与所得控除額(サラリーマンの経費のようなもの)が適用されますので、ここの部分でも節税効果が期待できます。

消費税において

消費税は課税売上高が1千万円を超えてくると、1千万円を超えた課税期間の翌々課税期間より課税されます。しかし、課税事業者になる前に法人成りすることにより、また2事業年度分、免税事業者でいられます。

ただ、設立事業年度のうち一定の期間の売上高や給与の額が1千万を超えてくる場合は、2事業年度目については課税事業者となります。

青色欠損金を9年間繰越しできる

利益ではなく、赤字になってしまった場合、個人事業であっても青色申告を行うことにより、3年間の損失の繰越しを行うことができますが、法人の場合だと9年間の繰越しが可能です。

社会的信用度が高まる

個人事業よりも法人の方が社会的信用度が高まる傾向があります。 個人事業だと「取引しない」というような取引先とも取引が可能になったり、人材採用の場面でも信頼度を得ることにより優秀な人材を確保しやすくなります。

法人成りのデメリット

社会保険に加入

法人の場合はたとえ1人社長の会社であっても社会保険に加入しなければなりません。 この社会保険料の負担が新たに加わることにより、上記にあげました所得税や住民税の節税メリットが薄まってしまう傾向です。

しかし、社会保険に加入することにより将来貰える年金が増加しますので、これをメリットと捉えて法人成りされる方々がいらっしゃるのも事実です。 年金については「本当に貰えるのだろうか?」と不安な意見もあるものの、貰えないことは無いでしょうし、生涯に渡って年金を受け取れる「長生きに安心」は確実にあると考えます。

均等割がかかる

法人の場合はたとえ赤字であっても、均等割額(地方税)が本店や支店のある自治体の数だけかかってきます。

金額は各自治体にもよりますが、大阪市で資本金等の額が1千万円以下で従業員数が50人以下の法人の場合ですと7万円です。(大阪市5万円、大阪府2万円の合計)(2020年9月現在)

お金を使うのに制限がかかる

個人事業の場合は利益部分についてお金を生活費等で自由に使えましたが、法人の場合は給与の範囲でしか生活費として使えません。なお、社長の給与(役員報酬)は一定の理由がないと期中に自由に増減ができなかったり、賞与の支給についても事前に税務署への届出が必要であったり、注意が必要です。

会計や決算が少し複雑に

法人は個人事業よりも会計や決算処理が少し複雑になります。特に確定申告については個人事業については税理士に依頼せず、ご自身でされる方も多いですが、法人税の申告書の場合はそのハードルがぐんと上がります。

まとめ

法人成りの主なメリット、デメリットについてご紹介しました。 これらについては個々の事業者によって受ける影響の度合いもまちまちです。 法人成りした後で「こんなはずではなかった…」と後悔しないためにも慎重な判断が必要となります。 もう少し具体的な数字を確かめたい場合や詳細なアドバイスを求められる場合は、税理士に1度ご相談をされることをオススメします。 弊所でも随時ご相談を承っておりますので、お気軽にご相談くださいね。

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